阿部祐己 写真展 「霧のあと」

2016.10.30
写真展・イベント情報
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阿部祐己 写真展 「霧のあと」

昨年度、新宿ニコンサロンで展示した「新しき家」で第17回三木淳賞を受賞した阿部裕己さんの新作写真展が銀座ニコンサロンにて開催中です。

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幼少の頃から足繁く通った霧ヶ峰は、名前の由来どおり、しばしば濃い霧に包まれる。草原の中で視界が霧に覆われると境目が消え、どこまでも先へ続いているかのような錯覚を覚えた。
 
春になると、山には火が放たれる。火入れは人為的に形成された草原の維持に一役買ってきた。ある年、風に煽られた炎が防火帯を越え、山へ燃え広がる山火事騒ぎがあった。数ヶ月後、草原は元の緑に姿を変えたが、焼け焦げた白樺の森は数年後に切り落とされ、姿を消した。

かつて山では山岳信仰が盛んだったという。秋に草原に残る社跡で行われる神事は800年前に武士たちが行っていた狩猟祭の名残でもある。人々の山への畏敬の念が 今に伝わる一方で、草原には本来の役目を終えた建築群が一つ、二つと増えている。 そのまま放置された無人の建造物は、現代の活動を後世に伝える新たな遺跡のようにも思えた。

山を覆う霧は一瞬の出来事だ。出ては消え、全てを覆うように見えてもどこかへと消える霧。人間の活動も同じだろうか。古い史跡も、現代の建物跡も、山の表面に作られた一過性の存在に過ぎない。
山の持つ長い時間軸の中で、霧の先には、はじまりはなく、終わりもない。
あとに残る、あるいは埋れていく霧のあとを探し、私は道を辿っている。 (阿部祐己)

 

 

 

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野焼きの煙と、草原を包みこむ霧、どこまでも白い浮遊物は、眼前の視界を遮り、私たちを幻想的な世界へと誘います。
FLAT LABOでは、ブックマット額装のお手伝いをさせていただきました。

 

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_10/26 (水) ~11/8 (火) 
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

 

 

photographer: 阿部 祐己(アベ ユウキ)
1984年生まれ。2011年日本写真芸術専門学校卒業。
写真展(個展)に、14年「新しき家」(Juna21新宿ニコンサロン、Juna21大阪ニコンサロン)がある。
主なグループ展に、11年・12年「写真新世紀」(東京展:東京都写真美術館、仙台展:せんだいメディアテーク)、13年「キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト展」(品川オープンギャラリー)、14年「三菱商事アートゲートプログラム展」(GYRE/表参道)、同年「BIRTH展」(CANSON Gallery Seoul/韓国ソウル市)、15年「Jeonju International PHOTO FESTIVAL」招待作家 (全州郷校/韓国全州市)がある。
受賞歴に、11年・12年写真新世紀佳作入選、14年三菱商事アートゲートプログラム入選、15年第17回三木淳賞がある。13年キヤノンフォトグラファーズセッションに参加。

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