私たちの印刷へのこだわり 3
みなさま、こんにちは。
FLATLABOプリンティングディレクターの霊山です。
第3回目のプリント用データ制作のテーマは「色調整」です。
今回は、私たちがどのような点に注目して色を調整しているのかをご紹介いたします。
序章
「色調整」とは、視覚的にわかりやすい具体性のある調整で、色のトーンやバランスによって作品の“温度感”が決まり、見る人の受ける印象が大きく変わります。
また、色の変化はコントラストにも影響するため、前回のテーマ「濃度調整」とも深く関係しています。
「色調整」は大きく分けて2パターンの調整を行います。
1、色かぶりを除去し、ニュートラルな色へ整える。
2、作品の雰囲気に合わせて、色合いを味付けする。
それでは順を追って説明します。
1章 色かぶりを除去し、ニュートラルな色へ整える。
写真データには、気づかないうちに「色かぶり」が発生していることがあります。
色かぶりとは、本来存在しない色がフィルターのように全体へ薄くかかり、1枚のヴェールをまとったように見える現象です。
これは、レンズやカメラの特性、また撮影時の環境光などによって起こるもので、まずはその色かぶりを取り除き、ニュートラルな色味へ戻す調整を行います。
色かぶりを取り除くことで、本来の色味を正しく再現し、作品に適切なコントラスト感を与えることができます。

2章 作品の雰囲気に合わせて、色合いを味付けする。
色かぶりをとったデータは、すっきりとしたニュートラルな印象になります。
ただし、作品によっては少し色を足すことで魅力が増す場合もあります。
料理で言うところの“少々のスパイスを加える”ような感覚に近い調整です。

3章 色についてのおまけのお話
色とコントラストの関係性
色はコントラストとも密接な関係があり、トーンカーブの濃度調整以外に色合いでコントラストを調整する場合もあります。
特に、データのシャドー部分がどのような色かによってコントラストの印象は大きく変わります。
・ブルー、シアン寄りのシャドー →視覚的な情報量が減るため、コントラストが高く冷たい印象になる
・レッド、イエロー寄りのシャドー →視覚的な情報量が増え、コントラストが弱く温かい印象になる
条件が限られるため難しい方法ではありますが、色でコントラストを整える手法として覚えておくと役立ちます。

色を抜く調整
夕焼けの写真を印刷するとしましょう。
夕焼けの赤やオレンジ、強い逆光などをを目立たせたい場合、おそらくほとんどの人は赤の彩度を上げたり、コントラストを高める調整を行います。
ですが、目立たせたい色を全体的に強めてしまうと、かえって色が飽和して分かりづらいな印象になります。
そのため、あえて赤やオレンジと相反する色(シアン、ブルーなど)を入れて色を抜くことによって余分な赤色を排除して本来の夕焼け色を際立たせる調整を行うこともあります。
また先ほどご紹介したように、色調整によってコントラストの調整もできるため、シアンやブルーを入れることによってコントラスト感を強めることができ、一石二鳥の効果があります。

最終章
色の調整は作品に服を着せるような、印象を決定づける重要な要素になります。
色かぶりに注意しながらも、作品の個性を損なわない繊細なバランスが求められます。
そのためには、作品が本来伝えようとしているゴールを感じ取り、そこへ導く感性と観察力が欠かせません。
次回はいよいよ最終章、『表現力を上げる調整 』ついてご紹介します。
それではまた次回、お会いしましょう!
霊山 玄/Gen Tamayama
プリンティングディレクター
プロラボにて数多くの著名写真家の銀塩プリントやデジタル出力を担当後、2019年FLATLABO合流。難しい色再現や斬新なディレクション案件を得意とする。